整形外科クリニックにおける理学療法士の採用が難しい時代に

 理学療法士は養成校の増加によって、現在では毎年9000人程度誕生しています。超高齢化社会に対応出来るほどには、新卒を含む理学療法士等の数はいると考えられます。

 しかし、そんな中で整形外科クリニックへの就職を希望する理学療法士の数は減ってきています。

理由としては、他の就職先の台頭が一番の原因だと考えられます。

私が就職した10年以上前は就職先といえば、まずは総合病院、そしてクリニックが就職希望先の筆頭でした。

しかし、現在では老人保健施設やリハビリ特化型デイサービス、訪問看護ステーションなど就職先の幅が大きく広がってきました。

就職の幅が広がったことによって、求職者においてのクリニックを選ぶ優先順位が下がってしまったことが、採用を困難にしました。

しかし、原因はそれだけでないと考えています。

クリニックへの就職希望が減った原因

大きな原因として年間休日の少なさが考えられます。

規模の大きな病院や老人保健施設・デイサービス・訪問看護ステーションなどは土日祝休みや完全週休2日制を導入している場合が多く、年間休日が105-125日に設定されています。

一方、整形外科クリニックは平日(水・木で半日)と土曜日の午前中が勤務となることが多く、年間休日が85-90日となり、ワークライフバランスを重視する傾向が強くなってきた時代背景もあり、年間休日の少なさが募集をかけても応募されない一因であると思われます。

 また給与面についても、整形外科クリニックでは運動器リハビリテーションを行う場合、基本的には1人1単位を取得し、1日18-22単位を算定することになります。直接患者にリハビリするだけで無く、ほかにも書類作成業務やカルテ作成などもあるため、時間的余裕は無く業務量としてはかなり多くなります。

 病院や老人保健施設も決して業務量が少ないわけではありませんが、それでも比較的時間の余裕がある場合が多いです。

もしこれで同じレベルの給与額であったならば、休みが多く業務が楽な仕事に就きたいと思うのも致し方ないのかもしれません。

 訪問看護ステーションでは、基本的給与が高く歩合制度を導入するところもあり、仕事した分だけ給与が増えるといった仕組みも人気になっている理由だと考えます。

それでも採用に困らないクリニックがある!

しかしそのような状況の中で、採用に困らないクリニックがあるのも事実です。

1.新規開業のクリニック

新規開業のオープニングスタッフは比較的集まりやすいです。理由としてはいろいろ考えられますが、やはり一から組織を作り上げるのを手伝いたいと思う人には魅力的に感じると思われます。しかし、開業5年を超えてくるとその魅力は薄れてきますので採用面での悩みは出てきます。

2.クリニック自体に魅力的なブランディングがある

患者集客としてもブランディングは重要な要素ですが、採用に関してもブランディングはとても有効です。

特にスポーツ領域を行っているクリニックは、比較的若い理学療法士に魅力的に映ります。理由として理学療法士を目指す理由の多くは自身がスポーツを行っており、その際ケガをしてリハビリを受けて理学療法士を目指したという人はかなり多く、スポーツ障害に携わりたい人には大変魅力に映ります。

スポーツ領域に限らず、肩関節や膝関節に特化しているようなクリニックでは、その障害やリハビリ興味のある人には大変有効な魅力となり得ます。

3.給与面を含む待遇が良い

同じ給与ならば比較的楽な業務に流れてしまいがちですが、給与水準を高くすれば募集は集まります。

「そんなことはわかってる!」

と思われるかもしれませんが、実際に一番効果が高いのは事実です。

私も採用の相談を受けることが多いですが、給与面の引き上げを考えている人が以外にも少ないのです。給与面の引き上げを考えていない理由として、近隣の給与条件とほとんど同じだからということが多いです。しかし、今回の記事で述べてきたように給与面が同じであれば、求職者からしたらすでに優先順位は下げられているのです。給与水準をすこし周りより上げることによって、同じ土俵に上がれる状況となります。

4.クリニック内の雰囲気や労務管理が良い

一番確実な採用方法として、従業員からの紹介というのもあります。医療従事者はかならず養成学校を経なければ資格取得できません。その際の同期や先輩後輩など知り合いは必ずいるはずです。そういった方たちを紹介してもらうのが一番確実だといえます。

しかし紹介する側からすると、今働いているところが知り合いを紹介するに足る職場なのかという考えが働きます。

パワハラ・セクハラ等による退職者が後を絶たない職場や残業代を支払わなかったり、労務管理がずさんな職場に知り合いを紹介できる人がどれだけいるでしょうか?

逆にとても雰囲気の良い職場やしっかりとした労務管理の出来た職場であれば、普段から周りに良い職場だと宣伝してくれます。また、その良い職場が求人を始めたことを従業員自ら周りに宣伝してくれます。そして従業員から募集していることを教えられた人は、その職場についてとても魅力に映ることになります。

採用は求職者へのオファー

2040年には100万人程度の人材が、医療介護業界で不足すると厚生労働省からの発表がありました。

事業をする上で人員を確保するのはとても重要なことです。人員基準が定められている保険医療機関や介護施設はより重要になるのは間違いありません。

これからの採用は、不足する人材の奪い合いになる時代です。

いかに、ご自身のクリニックのどこが売りなのかを積極的に求職者にアピールする必要があります。

今一度ご自身のクリニックの魅力について再考し、採用方法の変更を考えられても良いかもしれません。

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