障害年金の「所得制限」とは?制度の全体像と誤解しやすいポイントをやさしく解説
「障害年金には所得制限があるの?」というご相談をよくいただきます。結論から言うと、多くの方にとっては所得制限は関係ありません。ただし、例外となる制度も存在します。本記事では、制度の基本構造から誤解が生まれやすい理由、そして実際に所得制限が適用される具体的なケースまで、要点を整理して解説します。(数値は2025年時点の目安)
障害年金の基本と「所得制限」の位置づけ
障害年金は、病気やけがの影響で日常生活や就労に大きな制約がある方を支える公的制度です。主に次の2種類があります。
- 障害基礎年金:国民年金の対象(自営業・学生・主婦など)。原則、1級・2級が支給対象。
- 障害厚生年金:厚生年金の対象(会社員・公務員など)。1級〜3級が支給対象で、状態により一時金(障害手当金)が支給される場合あり。
原則として障害年金そのものに一律の所得制限はありません。ただし例外として、「初診日が20歳前」の障害基礎年金や、特別障害給付金には所得に応じた制限が設けられています。
| 制度の種類 | 主な対象 | 支給等級 | 所得制限 | 月額の目安(2025年) |
|---|---|---|---|---|
| 障害基礎年金 | 学生・自営業・無職・主婦など | 1級・2級 | 一部あり(20歳前傷病) | 約8〜10万円 |
| 障害厚生年金 | 会社員・公務員 | 1級〜3級 | なし | 報酬比例で変動 |
| 障害手当金(厚生年金) | 一定の障害があるが労働は可能 | (一時金・等級外) | なし | 約30万円(目安・一時金) |
| 特別障害給付金 | 学生無年金の救済対象など | 法定等級なし | あり | 約5万円(所得により変動) |
なぜ「所得制限」という言葉が誤解を招くのか
「障害年金は収入があると受け取れないのでは?」という不安は根強いものです。実際には、多くの受給者にとって所得制限は関係ありません。誤解が生じる背景としては、次のような要因があります。
- 制度ごとに所得制限の有無が異なるため、全体像が把握しづらい
- 年収と所得(課税所得)の違いがわかりにくい
- ネット上の断片的な情報や誤情報が混在している
- 家族や配偶者の収入が影響する、と誤って解釈されがち
- 年収が高いと一律で不支給 → 原則なし(例外はあり)
- パートやアルバイトで働くと止まる → 等級に該当すれば支給は継続
- すべての障害年金に所得制限 → 該当するのは一部制度のみ
- 「所得」は手取り額 → 控除後の課税所得で判定
- 家族の収入が影響 → 判定は原則、本人の所得のみ
所得制限の対象になる2つのケース
ケース1:20歳前障害による障害基礎年金
初診日が20歳未満の傷病で障害等級に該当し、障害基礎年金の対象となる場合は、前年の課税所得に応じて支給が調整されます。保険料の納付歴がない層を救済する制度であるため、公平性の観点から所得制限が設けられているためです。
- 全額支給:所得 981,000円以下
- 一部支給:所得 1,229,000円以下(所得に応じて減額)
- 支給停止:所得 1,229,001円以上
給与収入ベースでは、課税所得が約122万9千円を超えると支給停止の目安となり、年収に直すとおおむね約360万円前後に相当します。なお、判定は控除後の所得で行われます。
- 対象は「初診日が20歳前」のケース
- 所得には給与以外の事業・不動産・配当・一時所得なども含む
- 配偶者の所得は原則不問(本人所得で判定)
- 障害者控除・扶養控除などの適用で判定が変わることあり
ケース2:特別障害給付金
特別障害給付金は、学生無年金問題の救済として2005年に創設された制度です。障害年金の枠外の行政給付であり、すべての受給者に所得制限が設けられています。
- 全額支給:所得 4,721,000円未満
- 一部支給:所得 4,721,000円以上(減額)
- 支給停止:所得 5,119,000円以上
年収が600万円前後に達すると支給が止まる可能性があります。年1回の所得申告が必要で、未提出の場合は自動的に停止する点にも注意が必要です。
支給停止(減額)となる条件と注意点
所得制限は一律ではなく、「20歳前の障害基礎年金」と「特別障害給付金」に主として適用されます。判定は前年の課税所得に基づきます(年収や手取りではありません)。
- 全額支給:所得 370万4,000円以下
- 一部支給:370万4,000円〜472万1,000円(2分の1停止)
- 全額停止:472万1,000円以上
※具体の基準は等級や扶養親族等の状況で変わる場合があります。最新情報は必ずご確認ください。
判定対象となる「所得」には、以下が含まれます。
- 給与所得(控除後)
- 事業・副業の利益
- 不動産収入・配当所得
- 一時所得(保険金など)
- アルバイト収入が年間130万円超になった
- 不動産賃料などの資産収入が増加した
- 控除申請漏れで課税所得が上がった
- 所得状況届(現況届)の未提出
※停止後も、翌年以降に所得が下がれば受給再開の可能性があります(届出が必要)。
まとめ:まずは「該当制度」と「判定基準」を確認
- 障害年金全体に一律の所得制限があるわけではない
- 対象となるのは主に20歳前障害の障害基礎年金と特別障害給付金
- 判定は前年の課税所得(控除後)で行われる
- 控除や届出の有無で結果が変わるため、毎年の確認が重要
就労や収入計画と両立させるための所得シミュレーションや、届出のサポートも承っています。状況に応じた最適な運用をご提案します。
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